2016年11月7日月曜日

才能ある画家の平凡な絵画 Painters Guild

ここのところ調子が思わしくなく、書きたい記事はいくつかあったのですが、どうにも書くに書けずにおりました。HoI4 の AAR もせっかくよいところまで到達したというのにまだ続きを書けておりません。こいついつも調子悪そうにしているなと思われるかもしれませんが、どうにもならないものはどうにもならないのです。そうこうしてぐだぐだ時を過ごしていると、季節はあっという間に冬を迎え、Steam はハロウィンセールに突入してしまいました。仕方ないので何かを買えば何かが変わることに期待して(?)、このたびのセールでは以前楽しめた The Last Door の続編 The Last Door: Season 2 と、無料のウェブ体験版を遊んで以来気になっていた Painters Guild を購入しました。どちらも近いうちに、というより積んだまま遊ばないうちにお得バンドル入りでもしそうな大幅値下げ率ですが、まあ少しぐらい無駄遣いしてもいいでしょう。
このうち前者はアドベンチャーゲームであり、繰り返し訴えているとおり私にとっては遊ぶにあたって体力(EU4 でいえばランダムイベントでシャーンシャーンと安定度が連続で下がっても即国家崩壊しないだけの備えのある状態)か気分のノリが必要なゲームです。そしてそもそも前作をクリアはしたもののコンプリートはしておらず、公式サイトで無料公開されている後日談も未プレイのままなのです。さらに悪いことに、このゲームはたいへん楽しめたゲームなので、Season 2 までコンプリートしたらぜひ記事にしたいと思っているのですが、そうやって予定を立てることがまた自分のなかで重しとなってしまう悪循環におちいっています。というわけで、重たいアドベンチャーはとりあえず放っておいて、ウェブ無料版(リンクを張ろうと検索してみたものの大手無料フラッシュゲームサイトしか引っかからず、公式サイトには無料版へのリンクが見当たらないので権利的にどうなのかいまいちわかりません。自分がどこで遊んだかも記憶にないです。気になる方は各自検索してください)のプレイ感からすでにある程度の楽しさは保証済みで気軽に遊べそうな Painters Guild をさっそく遊んでみることにしたのでした。よかった、積んだまま腐らせずに済んだ。





Painters Guild はルネサンス期イタリアの絵画ギルドを題材にした一種の経営シミュレーションゲームです。体験版ではレオナルド・ダ・ヴィンチアンドレア・デル・ヴェロッキオの師弟関係に焦点が当てられ、主に少年ダ・ヴィンチを立派な画家として育てる過程を楽しむゲームでしたが、本作では画家ギルドの運営がゲームの主目的となっています。プレイヤーはフィレンツェ、ローマ、あるいはヴェネツィアに拠点をもつ絵画ギルドの運営者として画家の雇用管理をし、仕事を割り当てて絵を描かせたり、見習いに絵画製作時に消費する絵の具を準備させたりといったマネージメントを行います。時には史実に基づいた歴史的事件のイベントなども発生し、フィレンツェの政変サヴォナローラの神政やマキアヴェッリ 『君主論』発表のニュースなども入ってきますが、あまりゲームには関係しません。しかしながら、ダ・ヴィンチやミケランジェロボッティチェリなどの有名な芸術的天才はヒストリカル・キャラクターとして年代ごとに固定で登場し、雇用費は割高ながら自由に雇用できます。

サヴォナローラ かわいい

この点は Painters Guild の特色とも繋がっています。このゲームでは才能がなによりも重要であり、才能のないものはいくら努力をしても能力の伸びしろに限度があります(正確にいうと、いくら下積みの仕事をさせても仕事の主役となれるだけの満足な能力を得られる前に寿命を迎えます)。その点歴史的偉人は天才であり、極大の潜在的才能を持った彼らの能力は凡人と比較にならない速度で伸びていきます。そのため、いかに才能ある若者を伸ばすか、逆に凡人への無駄な投資をいかに避けるかという選択がギルドの運営に直結します。才能は雇用者を選ぶ時点で5段階の星の数で表示されるため、凡人と才能ある人の違いが一目でわかってしまうのはゲーム的にややもったいない気はしますが(ヒストリカル・キャラクターの能力は表示されませんが、ダ・ヴィンチが規格外の6、あとは4~5といったところでしょうか)、こうした才能周りの点は非常に面白いシステムだと感じました。潜在的才能の差という問題は体験版におけるダ・ヴィンチとヴェロッキオの師弟関係においても表現されており、これが制作者が Painsters Guild において表現したかったテーマの核心のひとつなのでしょう。多少ネタバレとなりますが、この点をよく理解していなかった初プレイでは非常に苦労したのですが、序盤に雇えるダ・ヴィンチらを少しばかり無理して雇ったところ、一気に楽なゲームとなりました。

絵画制作はダ・ヴィンチら天才に任せ、凡人はひたすら絵の具を作って人生を終える

しかしながら、この Painters Guild 製品版において、無料版の雰囲気から期待していたものが正しく実装されているかと考えると、少々残念な点が目立ちます。無料版の頃からダ・ヴィンチをヴェロッキオの隣に配置して教育を受けさせたり、体力がなくなったらベッドに配置して休ませたり、巨大絵で急ぎの注文の場合は二人を並べて一緒に描かせたりといった仕事をすべてクリックで行う、非常にマイクロマネージメントが多いゲームでしたが、製品版ではこれがさらに悪化しています。というのも、ギルドの発展に伴い、管理する画家が増え続け、請け負う仕事が増え続ける一方で、マイクロマネージメントの方法は無料版の画家コンビを相手に行っていたものから一歩たりとも進歩しないのです。ゲームの終盤になるとあまりにクリックが忙しすぎ、もはや私の嫌いな(下手で苦手だからともいいます)操作量競争系リアルタイムストラテジーの領域に突入しているような趣があります。誰でも嫌いなもののにおいに対しては敏感なものとはいえ。

ときにはたぐいまれな才能が野に眠っていることも

さらに悪いことに、RTS 的に忙しいゲームならその方面に特化させればよかったものの、ゲーム性はそもそもの発端である画家コンビによる画廊運営ゲームの基礎的な面から脱却できておらず、ゲームとしてはそこから画家の人数と仕事の数が増えたぶんだけ中途半端に忙しくなっています。ポーズ中にキャラクターを操作をできない仕様は RTS 的な競技方向には有効であったかもしれませんが、経営シミュとしてあるべき姿を考えると、このゲームでそうする必要はあったのでしょうか。競技ゲームであればオートセーブと Ironman モードは近年のゲームにはもはや必須の機能といえますが、このゲームにはオートセーブすらありません。これはクラシカルなどといってごまかせる領域ではなく、明らかにゲームシステム上の欠陥です。結局のところ、体験版初期のデザインコンセプトのままゲームの図像を野放図に拡大させた結果がこれなのでしょう。

もちろんここまで来るとある程度の余裕はあるのだが、最大効率を目指さねば気が済まないのはゲーマーの性

こうした小さな、しかし数多い不満点が改善されていれば――オートセーブは当然として、ポーズ中のキャラ操作を可能にしたり、キャラごとにショートカットを割り当てられたり、設備のアップグレードでマイクロマネージメントを効率化・自動化できたり、大聖堂壁画などの Great Work をもっと意味のあるものにしたり――、このゲームはきっと段違いによいゲームとなっていたはずです。しかし残念ながら、ゲームを制作する能力のないわれわれにできることはといえば、ただこうして嘆きのレビューを書くぐらいのものです。とはいえ、アイデアの面では体験版の段階からたしかに光るものがありました。この失敗をばねに、次のゲームではもっとよくやってくれるはずだと思います。

結論として、この Painters Guild にはいろいろと難はありますが、将来的な可能性は確実に感じられます。多くの方に購入されれば制作者への支援となるだろうと思いますし、他方で無料版をプレイした方の制作者に対するお布施としてはそれなりに満足できるだけの出来ではあります。あるいは、アーリーアクセスはとっくに抜けて完成版となっていますがいますが、開発資金ができればこれからもアップデートでよくなる可能性もなくはない、とまでいってしまうと希望的観測にすぎるでしょうか。ともあれ、興味をもたれた方はぜひセールなどの機会でご検討ください。


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