2016年7月2日土曜日

カジュアルな交易ゲームの難しさ 16bit Trader

前回に引き続き、無料で入手してカードの排出目当てでプレイしたゲームの話。「購入日」の表示が今年6月19日となっており、手に入れたのはごく最近のことらしいが、どうにもまったく覚えていない。もとより記憶力の曖昧な自分のこととはいえ、さすがにボケすぎではないか。なので記事でも書いて頭を働かせようというわけです。

今回遊んだのは 16bit Trader というゲーム。もう名前からしてカジュアルを標榜しているようなものだが(xbit + 単純な名詞という麻雀で言えば平和のような組み合わせ)、なるほどグラフィックや音楽からゲームデザインまで「カジュアル」と呼ぶにふさわしい雰囲気だ。定価もたったの298円という「カジュアル」なゲームだが、少なくともよい雰囲気の世界観を構成する音楽とグラフィック、それにちょっとしたロールプレイング要素は「カジュアル」ゲームとしては十分に満足感の得られる水準にある。しかし問題はここから。


1時間も遊ばないうちに思ったのは、一般に「カジュアル」と称されるような、要するに開発費をなるべく節約して小さく作るような開発スタイルと、この交易ゲームというジャンルはまったくもって相性が悪いのではないかということだ。というのも、このゲームはカジュアルゲームとしてのガワがしっかりしているだけに遊べるのではないかと思ってがんばって遊んでみたものの、交易ゲームとして考えるとまったく面白くなかったのだ。
雰囲気は悪くないのだけど
一般に交易ゲームというのは地域・時節による物価の変動という交易の主要素に、護衛の雇用費や交通費などのコストとの兼ね合いと、そのおまけとしてクエストやイベントなど、ロールプレイング的というのかアドベンチャー的というのか、それともこういうのもナラティブといえばいいのか? とにかくそういったあくまで交易の味付けとしての物語的な要素が加えられて完成する。
ところがこのゲームはどうだろう。そもそも世界自体が狭いのだがこれは仕方ないとしても、どこへ旅してもこれといって地域の特色がなく、物価の変動はどうもただランダムに上下変動しているだけのようだ。ゲームの流れはクエストをこなしつつ適当に(雇用費と移動費を支払いながら)移動し、物価が下がっている町に着いたら買い、物価が上がっている町に着いたら売るという具合で、巧みな商売人というよりはただの流れ者といった感じだ。
物価が高騰している町の例。ただ物価がおしなべて高騰するだけなので、売るものがあればいいが仕入れもできない
こうしたランダム任せの旅の間、町々を移動していると幾度となく盗賊に襲われて金品を奪われるのだが、それを防ぐための護衛の雇用費が異様に高く、雇っているとあっという間に破産してしまう。そこで護衛を全員解雇してノーガードにしてみると、盗賊に襲われても一発で破産の淵まで奪われることなどはなく、財産から一定の割合を持っていくだけの良心的な盗賊しか存在しないことに気づいてしまう。かといってそれでは貯まる金も貯まらず、最終的にはただ雀の涙ほどの交易利益とクエストの臨時収入による総純収入額に応じた商人ランクのアップだけを目的に、適当に町から町へと移動するだけのゲームになってしまう。1時間がんばって遊んだ結論がこれで、私は投了するほかありませんでした。
クエストもまあないよりはマシといった程度の印象
問題は単純にゲームバランスの設計なのだが、開発費節減のためにゲームデザインも単純化せざるを得なかったとしても、結局のところゲームとして面白くないのではどうにも救えない。そういうわけで、カジュアルという建前があってもダメなものはダメという話でした。



この記事を書いている最中に、似たような交易ゲームで Merchants of Kaidan というゲームがあったのを思い出した。思い出したというか、16bit Trader 自体が MoK のカジュアル版なのでは? と思うぐらいコンセプトが似ているのだが、よくよく確認したら開発者が同一であり、この点では納得がいった。こちらはもう少し複雑で、マップも広いし全体的に上等なのだが、それがどうだったかというと、結局単純作業の繰り返しに飽いて途中で投げてしまった(Steam側の記録によると一応10時間近くプレイしたようだが)。しかしながら、こうして悪い例に当たってみると、あのゲームがどれだけ(相対的に)優れていたかを考えざるを得ない。これは近いうちにもう一度やり直す必要があるかもしれない(また積みゲーが増えてしまった……)。ともあれ、交易ゲームをお求めであれば 16bit ではなくこちらをおすすめします。今ならなんと90%オフ。


しかしガジェットの「殺された父の復讐」という説明といい、どこまでもそのまんまですね。記事を書くまで気づかなかった。

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